「あ〜・・・終わらねぇー」
「それは言わない約束ですよ、津山さん」
「大体、期末期首またいでの仕事って何だよって話だよな」
「明後日が期日ですから、それも仕方ないですって」
3日ほど前に桜が咲き始めたと言うニュースが流れたと同時に、会社での缶詰生活が始まった。
完全にこもっているわけでもないが、花見をしている余裕などなく、今年はまだ駅前の桜をチラ見しただけ。
しかも今日は雨。これで満開の桜は大分散ってしまうだろう。
「桜・・・日本人の心が・・・」
大分疲れがたまって、口を出るのは意味不明な単語ばかり。
同僚たちが資料集めやら小休憩やらと出払って、今は塚原しかいないから、つい気が緩んで文句も口に出てしまう。
「この仕事が終わったら花見行きましょう?」
「バカか、その頃にはもう桜は散ってるよ」
「桜はないですけど、新緑がきれいな時期になりますよ。木漏れ日っていうんでしたっけ?キラキラしてて、俺好きなんですよ」
塚原に木漏れ日とはまた似合わないなどと思いながら、その情景を思い浮かべてみる。
・・・確かにキレイかもしれない。想像だけでも癒されそうだ。
「あ、でも花見じゃないですよね。んーと、葉っぱ見?」
それじゃ情緒も何もないだろうが。
まあ塚原に情緒を求めるだけ無駄なんだろうけど。
「んじゃ、さっさとコレ終わらせて行くぞ。おすすめの葉っぱ見」
言えば、バカ面さらして満面の笑みを浮かべる。
その顔にちょっとだけ癒された気がした俺は、やっぱり疲れてるのかもしれない。
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