a ray of light (3)





「・・・やぁ・・・やめ・・・・・・っ」
「こんなに感じてるくせに。今やめたら、辛いのは晴日の方だよ?」
言いながら、辛いのは自分の方かもしれないと思う。
男を組み敷くなんて初めてだが、どうしようもないほど興奮している。
時折漏れる、甘い声も。
未知の感覚に恐れ、震える肢体も。
苦痛と快感に歪む顔も。
・・・たまらなく、ぞくぞくする。
「・・・っ・・・・・・やだ・・・っ」
指を引き抜き、すでに熱くなっている自身をあてがう。
瞬間、晴日の身がすくむ。
経験がなくても、次に何が起こるのか分かるのだろう。
「・・・やめっ・・・そ、なの・・・無理っ」
「・・・悪いのは、晴日の方だよ?」
「・・・っあぁぁ・・・ッ・・・・・・!」
小さく呟いて、ずっと捻じ込む。
上がる声を塞ぐように、唇を重ねる。
後は、ただ欲望のままに、何度も突き上げた。

「ここまでするつもりはなかったんだけどな・・・」
ぐったりと横たわる晴日を見つめて、ポツリと漏らす。
真っ白な顔で、頬には涙の跡がいくつも残っていた。
それを見ると、ちくりと胸が痛む。
壊してやりたいと思った。
晴日の何気ない一言にキレて、衝動的にそれを実行して。
途中から、自分の方に余裕がなくなっていた。
自分でも分からない感情に支配されて、抑えることができなかったのだ。
次に晴日が目を覚ましたときは、もうあの笑顔は自分には向けられないだろう。
それは、自分が望んだことのはずなのに、どうしようもないほど辛く感じる。
そして気付く。
何故、晴日を見ていると飽きることがなかったのか。
何故、あんなにも壊したい衝動にかられていたのか。
「―――・・・今更、か」
元には戻れない。
気付かないフリをしていたのは、きっと自分自身だから。
そして、選んだのも自分自身だ。
自嘲の笑みを浮かべて、軽く晴日の髪をすく。
その感触に小さく呻き声を上げる晴日に、一度だけ軽く口付けて。
「・・・これからもよろしく、お兄ちゃん」
最中、晴日が気を失う直前に告げたのと同じ言葉を。
自分に言い聞かせるように、小さく呟いた。






次の日から、晴日の態度は予想通り変化した。
家族に心配はかけたくないのだろう、あからさまな態度はしないけれど、二人きりになると仇を見るような目で睨まれる。
分かりやすい態度に苦笑しながら、それでも少しでも見ていたくて、朝子ちゃんにちょっかい出してみたりもする。
そうすれば、心配性な晴日はどんなに嫌そうでも、俺の目の届くところにいるから。

自分の気持ちを自覚したからと言って、そう簡単に素直になれるものでもない。
こうやって近くにいて、時にからかって、夜は好きなように抱いて。
これも結構幸せなんじゃないかと、馬鹿みたいに思ったりもする。
「・・・本当に馬鹿みたいね。まあ、あんたらしいけれど」
久しぶりに寄った店では、マリコに呆れたように言われたりもしたが、それでも確かに楽しかったのだ。
それは、誰かに興味を持ったということが、嬉しかったのかもしれない。
自分にも、そういった感情がある。
そして、その相手を好きにできる。
これを喜ばずにいて、どうしろと言うのだろうか。

・・・この時は、確かにそう思っていたのに。


その日の前日、つい苛めすぎてしまった。
翌朝も、平静を装っていたが、見るからに調子が悪そうだった。
その姿に、昨日の自分を少し後悔する。
無理をさせているという自覚はあるが、衝動は止めることはできない。
ここまで理性がなかったのかと、苦笑する。
朝子ちゃんにまで心配されて、それでも平気そうな顔で家を出ていった。
一緒に行こうかという申し出は、当然無視された。
学校にいても、思い出すのはフラフラだった朝の晴日の様子。
自分のせいだというのに、時間が立つにつれて心配になってきて。
放課後には、晴日の学校まで迎えに行こうと思い立った。
きっと嫌そうな顔をするのだろうけれど、構わない。
晴日の学校を見てみたいという気持ちがあったことも、否めないけれど。

そんならしくないことを思ったのが、まさか転機に立つことになろうとは思いもしなかった。







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05.08.24




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