LOVE TRAP (おまけ) |
「・・・じゃあ想いが通じ合ったことだし、久しぶりに晴日、感じても良いよね?」 「・・・・・・っ、ば、馬鹿っ!」 耳元で囁かれた言葉の意味を理解して、慌てて十夜から離れる。 それでも楽しそうに笑ってる十夜を見ると、まあいいかなんて思って、次に人間変わるもんだよなぁ、と他人事のように思う。 脅されて、強引にされて、散々好き勝手に弄ばれて・・・ ・・・何で俺、惚れちゃったんだろ。自分でも分からない。 初めは愛想笑いが気になった。 本音隠して疲れないかとか、家族として兄として何かしてやれないかとか考えて。 それがまあ、何であんな風になったのか分からないけれど、あんな形とはいえ違う表情が見られて、たまに優しい顔もするようになって・・・ ちらりと少し前を歩く十夜を覗き見る。 いつもの、無表情。でも、どこか楽しそうにも見えなくもない。 たまに優しい顔もするけど、無表情や愛想笑いより断然いい顔なんだよなと、ぼんやり考える。 ・・・ギャップに弱いのかも、俺。 「十夜?お前、どこ向かってんだ?」 気が付けば、近所にあるちょっとした森林公園の中を歩いていた。家の方向ではあるが、帰るのにここを通る必要はない。 「どこって、公園」 「や、それは分かるけど、何で?」 「何でって、少しでも早く晴日を抱きたいから。この時間なら、ほとんど人いないでしょ?」 しれっと言われるのに、一瞬遅れて意味を理解し、顔を真っ赤に染める。 「ちょ、待てよ、ここ外だぞ!?」 「一ヶ月我慢したんだ。今すぐ、欲しい」 「やっ、ダメ!外なんか絶対っ無理!」 今は人がいなくても、公園なんて公共の場、いつ人が来るか分からない。 そんなところで、あんなことできるわけがない。何考えてんだ、こいつはっ。 「・・・じゃあ、ホテル行く?」 「ほ、ホテル!?やだ、無理、俺行ったことねーもんっ!そ、それに男同士で、そんなとこ・・・っ」 「じゃあ晴日は俺に我慢しろって言うの?せっかく晴日の気持ち聞けて、今すぐに晴日を欲しくてたまらないのに?」 そう言われると、言葉に詰まる。 俺だって、全くしてほしくないわけじゃ、ない・・・ないけど、それとこれとは話が別だ。 「・・・せ、せめて家で、とか・・・」 小声で提案するのに、速攻で却下される。 「この時間じゃ、まだ朝子ちゃん寝てないでしょ。声、我慢できるの?俺は手加減しないよ?」 「・・・う・・・」 はっきり言って、我慢できる自信は皆無。 かと言って、朝子に聞かれるなんてもっての外だ。ていうか、そんなことになったら合わす顔がない。 「ね。だから、ここかホテルかしかないでしょ。まあ、思い切りできるのはホテルかな」 何を思い切りするんだよ、と怒鳴りつけてやりたいが、言えばさらりと答えられそうで何も言えない。 それよりも、気になること・・・ 「・・・お前、何でそんなに詳しいの?」 「え?」 「だから、俺と同い年のくせに、何でそんなにそういうことに詳しいんだよ?」 「・・・」 言葉に詰まっているのか、それとも無視を決め込もうとしているのか。何も答えない十夜に、ふつふつと怒りが込み上げてくる。 「俺、知ってんだぞ。お前が最近、夜中になると出かけてるの。そん時とかに、さっきの女の人とかとさ・・・」 自分で言って、さっきの店の前で声をかけてきた女の人を思い出す。 顔まで見えなかったけれど、親しそうな感じだった。どういう関係かまでは分からないけれど。 「大体さっきの人とはどういう関係だ?」 「・・・ヤキモチ?」 「ばっ、違う!ちょっと気になっただけ」 「ふーん・・・?」 慌てて誤魔化しても、信じていないようだ。少し笑みを浮かべて、曖昧に相槌を打っている。 あー、くそっ、俺なんでこんなこと訊いちゃったんだろ。 悔しくて、とにかく思いっきり睨んでみるけれど、全く効いた様子はない。 「あー、ホント晴日は可愛いね。やっぱり我慢できないや」 言って、そのまま首に顔を埋めてくるのに、慌てて引き離す。 「ちょっ、待て、家帰ってからって」 「朝子ちゃんいるよ?」 引き離すために伸ばした腕を逆に取られて、再び引き寄せられる。 そのまま本当に押し倒されるんじゃないかと思って、一気に頭の中はパニック状態で何も考えられなくなった。 「あ、朝子が寝てからなら、何でもさせてやるからっ!ここじゃ、無理っ!!」 「・・・分かった」 思わず叫べば、あっさり身体が離れる。 瞬間、助かったと安堵の息を吐いたが、じゃあ帰ろうと急に素直になった十夜に、勢いでとんでもないことを 口走ってしまったんじゃないかと気付く。 「ちょっと待って、さっきの、ちょっと訂正・・・」 「却下」 ・・・失言に後悔しても、時既に遅し。 家に帰るまでもそれからも、晴日の必死の懇願は聞き入れられることはなかった。 結局、十夜の思うがままに鳴かされて。 次の日は、フラフラで起きられない状態になっていた。 少しは悪いと思っているのか、やたらと気を遣ってくる十夜を横目に、そっと溜息をつく。 「大丈夫?ごめん、久しぶりで抑えきかなかった・・・」 それでも、心配そうに覗き込んでくる十夜に、思わず笑みが浮かんでしまったりして。 色んな表情が見られるだけで、嬉しく思えてしまう。 ・・・俺、こうやって騙されていくのかな。 自分の単純さに呆れながら、これからの我が身を案じて、晴日はもう一度溜息をついたのだった。 05.04.26 ・・・気がついたら何を書きたかったのか分からなくなりました(汗) とりあえず、どこでスルかで言い合う二人と、晴日の複雑な心境を書きたかったのです。 この二人がこれからラブラブになるのかどうかは、十夜次第(笑) 晴日は素直じゃないのでねvそこら辺も、今後書いていけたらいいなと思います。 何はともあれ、ここまでお付き合いありがとうございましたvv |