001  石田くんの気持ち


中学時代からの親友は、少しシスコンなところはあるけれど明るくて気の良いヤツだ。
それは高校に入った今でも変わらない。
だけど、確実に変わったことが1つ。

「あーもうマジむかつく!何であいつはいつもいつもっ!」
「ハイハイ落ち着こうねー。で、今度は弟クンに何されたの?」
「人が真面目に宿題してたら横から覗いて鼻で笑いやがった!」
「あー、数学だろ、それ」
こっちはレベルも県内標準の公立高校、対する相手は有名私立高校。
言っちゃあなんだが、もとからの出来が違う。
しかも晴日は数学が面白いほど苦手だ。そりゃ笑いたくもなる解答だったんだろうな。
「俺だってやればできるんだ!チクショー、年下のくせに!」
学年は同じなんだから、年下関係ないだろ。
憤る晴日を宥めながら、こんなんだからからかわれるんだろうなぁなんて思う。
晴日は昔から兄バカで、しつこいくらい朝子ちゃんの話ばかりしていたのに、最近は新しくできた弟クンの話ばかり。
そのことにこいつは気が付いてないんだろうな、きっと。
「で、結局宿題はできたわけ?」
「できたさ!・・・ちょっとばかし、十夜に見てもらったけど」
小声で付け足された言葉に、堪えきれず吹き出してしまう。
さすが晴日だ。いざ教えてもらったら素直にきいて、できたときにはお礼まで言ってるだろう光景が目に浮かぶ。
そして後からその前のことを思い出して、今のように憤る。
ホント、素直というか単純というか。分かりやすすぎる。

晴日自身は変わらない。
変わったのは、晴日のなかで弟クンの占める割合が増えたこと。
悔しい気持ちはかなりあるけど、晴日が幸せならそれで良い。

「んじゃ晴日が無事にやり遂げた祝いに、帰りに遊び行くか」
「おう!」

でもな、弟クン。晴日はそう簡単に渡さないよ?
だってこいつは俺の大切な親友だからな。



07.03.25

     


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