予想外のプレゼント  (後)





そして当日。
浮かれた気分を持続させていた俺は、1秒でも早く会いたくて約束の時間よりもさらに10分も早く呼び鈴を押した。
「おはよう」
「おはよ。早いな麻斗。とりあえず入って」
まだ準備が終わっていない様子の智に出迎えられて、そのまま部屋に入る。
「すぐ用意するから、ちょっと待っててな」
「うん」
「っても、時間まで大分あるだけど、どうしよっか」
「時間って?」
「夜の予定の」
シャツを羽織ながら、智は不敵な笑みを浮かべて言った。
何があるのか気になりはしたが、今の智の様子からだと訊いても教えてくれないのは明かだ。
ここはグッと堪えるしかない。
「時間って何時?」
「6時。とりあえず、それまで適当にぶらつくか」
正直人込みは好きじゃないから、このまま部屋でごろごろしてたい気もしたが、まだ智のプレゼントも買っていない。
だから智の言葉に素直に頷いて、二人揃って部屋を出た。



「さすがに凄い人だよなぁ」
とりあえず繁華街に出ての第一声目が、驚きとも呆れともとれる呟きだった。
確かに智の言うとおり、クリスマス一色の街は賑わっていた。そして、その大半がカップルである。
・・・俺たちもカップルなんだけどね。
人から見たら、男二人寂しい奴に見えるかもしれないなんて思って、そっと隣を歩く智を盗み見る。
すると視線に気がついたのか、智が笑いかけてくる。

それだけで幸せな気持ちになれる俺も、結構単純なのかもしれない。







智のプレゼントも買って、適当にブラブラして。
あたりもすっかり暗くなった頃、時計を見ればすでに5時半になっていた。
「さてと、そろそろ行くか」
やたら嬉しそうな智の後に従えば、着いた先はちょっと高そうなレストラン。
もちろん俺は入ったこともなく、本当に目的の場所がここなのか思わずともに確かめてしまう。
「クリスマスでな、言うほど高くないんだよ。さすがに万単位のフルコースとか無理だったから、これで勘弁して」
勘弁も何も、十分すぎるほどだ。
今までどちらかといえばイベントに興味がなかった智が、わざわざ予約までしてくれたなんて、それだけで嬉しい。
夢心地のまま席につき、気がつけばあっという間に食べ終わっていた。
料理は美味しかったのは確かなのだが、何だか印象に薄く、今更ながら勿体無い気持ちになる。

「さてと。俺から麻斗へのクリスマスプレゼント」
デザートも食べて一息ついたところで、智が唐突に言い出す。それも、満面の笑みで。
「プレゼントって・・・ここの食事がそうなんじゃないの?」
少なくとも、俺は勝手にそう解釈していたのだが、どうやら違うらしい。
戸惑いを隠さない俺をよそに、智はカバンから小さな箱を取り出した。
「はい、俺からのプレゼント」
「あ、ありがとう。開けてみていい?」
「どうぞどうぞ」
ゆっくりと丁寧に開けてみると、そこにはシルバーのネックレスが入っていた。
指輪のようなリングが先についているだけの、シンプルなデザインだ。
「実はこれ、お揃いなの。ほら」
首元を少し開けると、同じデザインのネックレスが智の首にかかっていた。
「ホントは指輪の方が良かったんだけどね。ちょっと恥ずかしくて。それはまた今度な」
「・・・智、ネックレスとかつけるの嫌いじゃなかったの?」
「まぁね。でも、麻斗とお揃いなら悪くないかなって」
突然すぎる展開に頭がついていかず、ふと疑問に浮かんだことをそのまま投げかければ、笑顔のまま返される。
以前、ペアリングとかって恋人みたいだよねって話をしたことがあった。
だけど、智はアクセサリーとかに興味もないし、その時はそれで話が終わっていたのだが・・・
「気に入らない?」
「そんなことないじゃんっ、・・・ありがとう。凄い嬉しい」
いつも意地っ張りの俺にしては、ごく素直に感謝の言葉が出た。
それを受けた智も、本当に嬉しそうに満面の笑みを浮かべた。




つい昨日までは、一緒に過ごすことも不可能かと思っていたくらいなのに。
今はどうしようもないほど、幸せで。
みんな、それぞれの形があるのは分かっているけれど、たまには世間一般のような過ごし方も悪くない。
そんなことを思いながら、俺は早速ネックレスをつけたのだった。







END








  何だかラブラブ話が書きたくて(笑)智×麻斗カップルに出てきてもらいました。
  こいつらは一番平和なキャラです。何やかんやで仲良しですし。
  自分で書いてて恥ずかしい感じでしたが(笑)砂糖菓子のように甘い感じでv
  メリークリスマス☆

04.12.25




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