L i m i t  (7)





初めに感じたのは、熱。
いつの間にか服は全て脱がされて、触れ合う肌が暖かかった。
そのくせ、触れる指先だけはやけに冷たくて・・・
「恭、ちゃ・・・ぁっ」
ピチャリという音とともに、右胸に濡れた感触。閉じていた目を薄く開けてみれば、恭平の頭が近くに見える。
「・・・ん・・・っ」
自然に漏れる声が、まるで自分のものではないように聞こえる。
だって、何だか変な気持ちなのだ。むず痒いというか何というか・・・。
触れられたところが心臓になったみたいに、ドキドキと言う音が聞こえてくる。
「っ、やぁ・・・っ」
やんわりと拓弥自身に触れられ、拓弥はビクリと反応する。
そのまま上下に動かされ、拓弥は高まっていく熱に何が何だか分からなくなってくる。
「やっ、ダメ・・・そ、んなとこっ・・・ぁ」
初めて他人に触られるのだ、ましてやそれが恭平だと思うと恥ずかしくて仕方がない。
動きを止めてもらおうと必死で恭平の頭に手をやるが、恭平の動きは止まることはない。
「んっ、や、でるっ、・・・―――っ!!」
恭平に導かれるままに、拓弥は欲望を恭平の手に放った。
同時に羞恥が込み上げ、自然と涙も浮かんでくる。
「あ・・・ご、ごめんなさい・・・」
「何で謝るの?俺は嬉しいのに」
思わず謝れば、恭平はにこりと笑って欲望を受け止めた逆の手で優しく拓弥の涙をぬぐう。
「ひぁっ!?」
そのまま濡れた手を拓弥の蕾にあてがうと、違和感に拓弥が悲鳴に近い声を上げる。
「やっ、恭ちゃん、なにっ?」
「・・・急で何も用意してないからな。ちょっと我慢してくれ」
「っ・・・」
ぷつりと自分でも触ったことのない場所に進入していく指の感触に、拓弥は居心地が悪くなる。
だが、それに構わず、恭平は丹念に解していく。
3本の指が動き回る頃には、拓弥はもう抵抗すら出来なくなっていた。
「はぁっ・・・恭、ちゃん?」
指が抜けた感触に、ようやく目を開ければ、目の前に切羽詰った恭平の顔。
その瞳の奥には、見たこともない男の色が窺えた。
「・・・拓弥、愛してるよ」
「ひっ・・・―――っ!!」
恭平の呟きとともに、先ほどとは比べ物にならない質量が拓弥を襲う。
「やっ、痛っい、やぁっ・・・!!」
「っ、・・・拓弥、力抜け」
「いやぁっ、無理ぃ・・・っ」
あまりの痛みに、先ほどまでうっすらと感じていた快感すら追えなくなる。
その様子に、恭平は痛みに萎えてしまった拓弥自身に手を伸ばす。
ゆっくりとそのまま力を加えると、拓弥の力が少し抜ける。
その一瞬を狙って、恭平は奥へと侵入を果たした。
「恭、ちゃんっ、きょ、ちゃ、ぁん・・・っ」
「ああ、ここにいるよ」
うなされたように、ただ恭平の名を呼ぶ拓弥の声が甘味を帯びてきたのを確認してから、恭平は再び動きを再開する。
拓弥は与えられる熱に翻弄されて、頭の中が真っ白になる。
そのまま導かれるままに欲望を吐き出し、同時に拓弥の中で恭平も果てたのを感じたのを最後に、 拓弥は意識を飛ばした・・・。







「ぅん・・・」
「気がついた?」
近くで聞こえた声に、ゆっくりと瞼を上げれば、心配げな表情を浮かべている恭ちゃんの姿。
何で恭ちゃんが俺の部屋にいるんだろうとぼんやり考えて、ハッと昨夜のことを思い出す。
一気に顔を真っ赤に染めた拓弥の様子に、恭平は優しく微笑む。
「どっか痛いトコとか辛いトコないか?」
「ん・・・何か変な感じはするけど、痛くは、ない」
「そうか。なら良かった。無理するなよ?何かあったら・・・拓弥?」
拓弥の身体を心配していれば、どこか驚いたような呆然としたような表情で恭平を見ている拓弥に気付く。
話を切って名を呼べば、はっとしたように首を振る。
「何か、恭ちゃんが優しい・・・」
ぽつりと呟くのに、苦々しい気持ちが込み上げてくる。
優しくすることで拓弥が驚くと言うことは、すなわち今までの態度を責められているようで・・・
「・・・悪かったな」
「あ、違う!その、嬉しくて・・・」
そう言って照れ笑いを浮かべる拓弥が、愛しくてたまらない。
これからは、今まで以上に優しくしてやらないとなと固く誓う。
「ねぇ、恭ちゃん・・・」
「ん?」
「やっぱり、俺が高校卒業したら・・・ここ、出てかなきゃダメ?」
縋るように見つめられて、恭平はそのまま拓弥を抱きしめる。
「拓弥が出て行きたいって思うまで、俺は離さないよ」
「っ・・・じゃあ、ずっと一緒にいても、いいの?」
「バカ。そんなこと言ったら、離せなくなるだろ」
「・・・恭ちゃん、大好きっ!」
感極まって抱きしめかえせば、恭平から優しく口付けられる。





初めは、家族としての愛情が嬉しかった。
お兄ちゃんとして慕ってきて、いつしか一人の人として本気で好きになって。
いつか来るであろう終わりに怯えて、期限を突きつけられて。
だけど、その期限はこの瞬間に無期限に変わった。
これからは家族として、恋人として、ずっと一緒に暮らしていきたい。

拓弥はずっと求めて止まなかった恭平の腕の中で、ただそう願って、目を閉じた。







END






04.12.08




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