雨の日には傘を





今日は何だか、ついてない。

今日までに仕上げなければならないレポート。
完成間近にパソコンがフリーズした。
そのままイカレたため、結局一から手書きで直した。
おかげで寝不足、今朝は久しぶりに寝過ごした。
ヤバイと大慌てで出てくれば、1限は休講ときた。
仕方なしに適当に時間を潰し、3限の授業で昨日苦労したレポートを提出すれば、手書きは不可とか言いやがって、学校のパソコンで再度打ち直し。
無事期限内に提出出来たから良かったものの、やたらと無駄な時間を過ごした気がしてならない。

「・・・で、今度はコレかよ」

講義棟を出たとこで、ガクリと肩を落とす。
朝から曇っていた空は、俺が帰るまでもちこたえられなかったらしい。
家を出る時は降ってなかったから、当然傘は持ってきていない。
「・・・駅まで走るしかないよなぁ」
歩いて5分の距離。
走ればズブ濡れにまではならないだろう。
そう判断した智は、次々に傘をさす学生たちを横目に雨の中走り出した。





「・・・結構濡れたな」
たどり着いた駅で一息ついて、手で水をはたきながら地下に潜る。
下から吹いてくる生暖かい風がいつも以上に気持ち悪い。
電光掲示板を見れば次の電車まで10分以上開いている。
どうやら電車は行ってしまったばかりらしい。

今日の占いは、きっと双子座が最下位だ。
普段気にもしないのに、ぼんやりとそんなことを思う。

「智?」
瞬間、呼ばれた名前。
振り向けば、ベンチに座ってこっちを見ている麻斗がいた。
「うわー、すごい偶然!今帰り?」
「麻斗・・・何でここに?」
俺の記憶が正しければ、今日は5限まであったはず。
そう訊けば、やたらハイテンションで説明してくる。
「5限休講だったんだ。で、さっきの電車に乗ろうと思ったんだけど、混んでたから次の待とうかなって」
乗らなくて良かった。
そう嬉しそうに笑う麻斗に、何だか俺まで嬉しくなってくる。
・・・思った以上に、今日の運の悪さにダメージをくらっていたのかもしれない。
ふっと気持ちが軽くなるのを感じる。

「って、智濡れてるじゃん。傘は?」
「持ってくんの忘れた」
「そっか。もっと早く会えれば入れてあげられたのになぁ」
大学近辺で男二人相合い傘は恥ずかしくないかと思うが、口には出さないでおく。
言えば、せっかく上機嫌の麻斗が膨れるのが目に見えているから。
膨れた麻斗も可愛いが、今は笑顔を見ていたい。
「でもそのままじゃ風邪引いちゃうよね。早く帰って着替えないと」
「まあすぐ乾くでしょ」
「またそんなこと言うんだから」
はいと渡された小さなタオルを苦笑しながらも素直に受け取る。
そういえば麻斗に会うのも久しぶりだ。
メールはちょくちょく入れてくれるから、全く連絡をとっていないわけじゃなかったけれど。
最後に会ったのは先週の火曜日だから・・・1週間以上会ってなかったのか。
気が付いたら、麻斗が何だかいつも以上に愛しく思えてくる。

「麻斗、今日はバイト?」
「ううん、今日はないよ」
「じゃあ、今から俺んち来ない?」
誘えば、また嬉しそうに笑う。

「何か今日の俺、すっごいついてるかも♪」

・・・俺も、ついてるかも。
さっきまでの気持ちとは正反対のことを思う。

麻斗に会うまでの今日の俺は、例えるなら今日の空みたいだった。
曇り空では耐え切れず、雨も降り出したような、そんな気分。
それが、麻斗に会った瞬間に、止んだ。
まるで、そっと傘を差してくれたかのように。

「何笑ってるの?」
「いや、別に。それよりさ、聞いてくれよ。今日さー・・・―――」

二人肩を並べて、電車に乗って。
それから、ゆっくり昨日からの俺の不運と、幸運を話そう。

気が付いた時には、空も晴れているだろうから。








05.06.30 




 智の性格がいまいち掴めないので、書いてみようと考えた智視点話。
 とりあえず、思った以上に麻斗に惚れてるってことだけが分かりました(笑)
 そして、結局性格は掴めず。
 というか、書いてて恥ずかしくなってきて、深く考えることができませんでした(笑)


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