3:00  十夜と晴日の場合





ふいに目が覚めた。
眠った記憶が定かではないが、布団に入っているということは寝ていたのだろう。
辺りはまだ暗く、夜は明けていないらしい。
今何時だと枕元に置いてある携帯に手を伸ばそうとして、そこでようやく違和感を覚えた。
「・・・腕?」
動きづらいと思ったら、晴日を抱き抱えるように背中から誰かの腕が巻き付いている。
誰かのもなにも、こんなことするのは一人しかいないわけだけど・・・
ぎこちない動作で首を回せば、静かに寝息をたてている十夜が目に映った。
「やっぱり」
・・・そうだ、昨夜は十夜の部屋で遊んでたんだ。
ゲームでもやろうと誘いに行ったら、十夜は学校の課題だかなんだかで机に向かっていた。
頭良い学校は大変だなと思いながらも、邪魔しては悪いと思って部屋を出ようとしたら、十夜がもうすぐ終わるからって言って。
それならと邪魔にならないようにベッドに寝転がって一人でDSを始めて・・・そこからの記憶がない。
つまりは単純に、そのまま寝入ってしまったということだろう。
で、ここでこうしてるってことは・・・そのまましちゃったのかなぁ。
十夜としちゃった記憶もないが、この体勢からして何もしてないと言う方がおかしい気がする。
とにかく目も覚めたことだし、早いとこ自分の部屋へ戻ろうと身動きしたところで、十夜が小さく声を漏らした。
中途半端な体勢だった晴日は、腰に回っている腕の力で寝返りを打つように向きを変えられる。
十夜と向き合うような形になったところで、ゆっくりとその目が開けられた。
「・・・おはよう」
チュッと軽く音を立ててキスされる。
その腕は相変わらず晴日を捉えているので、逃げ出すこともできない。
「・・・まだ3時か。もう少し寝よう?」
「ちょっと待て、俺は部屋戻るから」
「なんで?」
「なんでって、いつもそうしてるだろ?」
高校生の男が二人、しかも血が繋がらないとは言え兄弟が、一つのベッドで寝ていたらおかしすぎる。
普通にごろ寝しているわけでないのだから、家族に見られたら不審に思われるだけではすまないだろう。
・・・それを言ったら、している最中を見られた方が完璧にヤバイわけで、そもそも家でする方がおかしいのだけれど、そんなこと十夜が気にするわけもない。
結局、晴日が夜中にこっそりと部屋に戻る羽目になるのだ。
ちなみに逆に晴日の部屋でしたときは、半ば無理矢理に十夜を帰している。
「今日は帰る理由ないでしょ?」
「や、十分あるだろ」
「晴日が勝手に寝ちゃったから、ベッドをとられた可哀想な弟は仕方なく一緒の布団に入りました。どう?」
「・・・俺を叩き起こすとか、お前が俺のベッドで寝るとか」
「晴日は一度寝たらなかなか起きないじゃん。それに部屋に勝手に入ったら気分悪いだろ?」
他に反論は?と問われて、何も返せないのが悔しい。
「晴日と朝まで一緒なんて滅多にないんだから、ゆっくり堪能させてよ」
ね?なんて優しくお願いされて、演技だと思いながら今日くらいは良いか?とか思っちゃう単純な自分が悲しい。
何もしていないってのは確かみたいだし、晴日だとてこうしていること自体が嫌なわけではない。
「・・・誰かに見つかったら、言い訳しろよ」
もぞもぞと改めて布団に潜り込みながら言えば、十夜が楽しそうに笑う。
「残念、まだ拒否ったらすぐに帰れないようにしようと思ったのに」
・・・ちょっと甘い顔したら、すぐこれだ。
「したら、蹴飛ばしてでも帰ってやる」
「帰さないよ、勿体ない。ほら、大人しく寝て」
回された腕の力がちょっとだけ強くなって、その温もりにすぐに眠気が襲ってきて。
結局いつもこうやって負けちゃうんだよなぁ、なんて思いながら晴日は心地良い眠りについたのだった。



「晴日がどうしても一緒に寝たいってきかなくてー」なんて大嘘ぶっこいて晴日の蹴りと家族の笑いを受けたのは、それから4時間後の話。






08.10.28




   深夜と言ったらこの二人だ!と真っ先に思いついたのですが、たまにはエッチしてない二人もあり?と方向転換。
   ついでに、いつも何やかんやで可哀想な十夜に良い思いを、と思ったのですが・・・うん。
   普段はこっそり部屋に戻ってるんだよって件が書けただけで私は満足です(笑)




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