祝日。 佐野×二宮の場合





「あー・・・暇」
今日は月曜日。だけれども何かの日とかで、いわゆる祝日だ。
学校が休みなんて、俺にとっては最高な日なわけだが、こうも何もやることがないと退屈で仕方ない。
渋谷は3連休を利用して家族でばーちゃんちに行ってるし、他の連中もやれ彼女とデートだの勉強しなきゃだのと付き合いが悪い。
高3の秋、勉強しなきゃいけないのは分かっているし、俺だって今までとは比較にならないくらいかなりやっているとは思ってるんだけど。
―――・・・こんなに天気も良いしなぁ。
仰向けになったままさらに視線だけ窓の向こうにやれば、まさしく秋晴れといった見事な晴天が続いている。
こんな日に、家にこもって勉強だのゲームだのするのは実にもったいない気がする。
かと言って、誰もつかまらないのが現状。
一人でも別に構わないのだが、それだと出かけるのが億劫という矛盾した気持ちがあるわけで。
「・・・ノってくれっかな」
携帯のアドレス帳を順繰り眺め、動きを止めたところに表示されている名前は、つい最近妙な仲になったクラスメートのもの。
一度電話したときに俺が変なことを口走ったものだから、正直気まずかったのだが、夏休み明けに会ったときは至って普通で、そのまま今まで通りの付き合いに戻っていた。
つまり、学校ではたまに話す程度。あとは放課後に二人でラーメンとか食べに行くくらいか。
あれだけ喚いておきながら、結局関係は変わらないままなのも我ながら笑える話だ。
どうしたいか分かんないけど、あの時は何となく離れたくないと思った。
今だって、正直言えば会いたいのだ。
何がしたいとかじゃなくて、ただ顔を見て何となく話して、そんな感じ。
「―――・・・うっわ、乙女思考ー」
渋谷が聞いたら笑い転げてむせているところだろう。自分でも鳥肌がたちそうだ。
分かっちゃいるけど、何となくもうあとには引けない。
エイッと勢いをつけて身体を起こし、その勢いのまま通話ボタンを押してしまう。
3コール鳴ったところで居たたまれなくなってきて、切ってしまおうかと思ったとほぼ同時に受話器から佐野の声が聞こえてきた。
『もしもし?』
「おー、悪い。二宮だけど。今日さ、暇?」
『二宮からのデートの誘いなら、断らないよ?』
何でこいつはこういう言い方をしやがるんだろうか。
じゃあいいよと切ってやりたいところだが、そうすると今日一日ひとりで退屈に過ごさなきゃいけないのが確実になる。
それより何より、きっと後味悪いことになるであろうことが推測されるので、とりあえず落ち着こうと一瞬のうちに暗示をかける。
「んじゃ、遊んでよ。暇で仕方ないんだ」
『了解。何したい?』
・・・・・・具体的になんて、何も考えてなかった。
というか、こいつと二人で一体どこで何をしたら良いのだろうか。
色々と想像してみるが、どこも不似合いな気がしてしまう。
「・・・どうすっかね」
『記念すべき初デートだからね、迷うところだけど。とりあえず、初めて会った土手にでも集合してみる?』
「なんだよ、その初デートって」
『あれ、違うの?』
耳元でクスクスと楽しそうな笑い声がする。
ホント、なんでこんなにも腹立つ奴に俺は会いたいなんて思ってるんだろう。
「別に特別なもんじゃないんだからな。ただの暇つぶしだかんな!」
「はいはい。でも放課後と違って時間はたっぷりあるからね」
「だからこその暇つぶしだ!とにかく、その土手に1時間後に集合な!」
まだ笑っている気配を感じながら、勢いよく携帯を閉じる。

ちょっとばかし会いたいなんて思った自分が、やはりバカだったのか。
というか学校以外での佐野に興味があったわけだが・・・まさか言えるわけもない。
「とりあえず、飯でも食いに行って、フラフラするくらいかな」
あとは行き当たりばったりに。
あいつが穏やかな顔を見せてくれれば、きっと俺は満足するだろうから。

結局、本当に何をするでもなく、のんびりと祝日は過ぎて。
次の日にはいつもの騒がしい関係に戻っていたけれど、それでも妙に満たされた気持ちでいたことは、俺だけの秘密だ。





07.11.11




   第二部への繋ぎ的に(笑)<企画でやるなよ
   休みは嬉しいけれど、いつも会ってる人に会えないのはちょっと寂しいかななんて。





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