月曜日。 秋良×和宏の場合





中学生の頃から使っている目覚まし時計の音で、眠い目をどうにかこじ開ける。
時計の針は7時。
少しの間ぼんやりとしてから、今日が何日で何曜日かを思い出す。
気が付いてしまえば、後の行動はスムーズに進む。
ベッドから起き出し、大きく伸びをして。
早々に壁にかけてある制服に着替えて、念のため中身を確認したカバンを持って出かける用意をするために部屋を出た。
これが、平日の朝の風景。
以前は今日ほどダルイ日はなかったけれど、今じゃ全く逆の気持ちだ。
両親は、朝の準備が早くなって良かったとしか思っていないだろうけれど。



「おはよー、今日も早いわね」
「あ、おはよう大塚さん」
朝のホームルームが始まる15分前。
登校してきた渚が前の席に座るのに、和宏は笑顔で挨拶を返す。
それを合図とするように、和宏は読んでいた本をカバンにしまう。
別に意識しているわけではないが、秋良がいないときは一人でいることが多い和宏に渚はよく話しかけてくる。
本人は、あとで秋良が悔しがるのを見るのが楽しいからと言っているが、多少なりとも気を遣ってくれているのが分かるので ありがたく話に付き合ってもらう。
それに渚が話し始めると、他のクラスメイトも話しかけてくることが多くなる。
別に和宏が孤立しているわけではない。ただ、つい自分の世界に入り込んでしまう癖があるのが原因だろう。
自分でも分かってはいるのだが、性格なので仕方ないと諦めていたところに 秋良や渚が間に入ってくれることでうまく行ってるのだ。
「あー、それにしてもダルいわー。一週間のうちで、月曜が一番ダルい」
「そう?あ、でも確かに柘植も月曜日はいつも遅いよね」
「休み明けはツラくない?秋良もねー、朝練のときは遅れずにくるくせに、他のときは遅刻ギリギリなのよね」
「何もないときだと、ついゆっくりしちゃうんじゃないかな」
それで結局遅くなって、駅から学校まで全力疾走ということも良くあるのだ。
朝練がない日まで朝練か!とよく教師に小言を食らっているのを見かける光景だ。
「今日も捕まるんじゃないの」
「月曜日は遅刻する人が多いから、先生たちのチェックも厳しいんだろうね」
「でしょうねぇ。でも、相田くんはそんな日でも早いよね。すごいわ、何でできるのって感じ」
「僕ね、月曜日が一番好きなんだ」
クスクス笑う和宏に、渚は不思議そうな顔で訳を訊いてくる。
「単純だよ。土日は学校がないでしょ?その間は顔も見られないんだから」
逆に今日からは5日間会えるわけだ。こんな嬉しいことはないに決まっている。
「前に、毎日が祝日って言ってたヤツか。でも、今は土日も会えるでしょ?」
「うん、でも部活もあるからどっちかだけだし。それに、やっぱり学校って特別だよ」

「うぉっしゃ、今日は余裕ーっ!」
「お、秋良はよー」
「余裕ってほどでもねーだろ。もう鳴ってんじゃん、予鈴」
「えー、本鈴前なら余裕だろー?」
バタバタという音とともに教室に駆け込んできた大声の持ち主の周りには、一瞬で笑いと人が集まっている。
それを見ながら、和宏はまた楽しそうに笑みを深める。
「あいつが来ると、一気に騒がしくなるわよね」
「でも、僕はこの雰囲気も好きだよ」
彼が入ってきた瞬間に変わる空気。自分の中にも、暖かい気持ちが生まれる瞬間。
二人でいるのも大好きだけど、この中にいるのも楽しくて、嬉しくなってくる。

本鈴がなって、担任が入ってくる少し前。
こちらを振り返った柘植が、にっこりと笑いかけてくれる。
それだけでもう単純なまでに嬉しくなって。あと5分後には、きっとこっちに来てくれて、おはようってまた笑いかけてくれるのだろう。

平日の、いつもの光景。
これがあと5日間も続くのだから、やっぱり月曜日が一番待ち遠しくて大好きな曜日なのだ。






07.10.29




   あ、また秋良の出番がなかった(笑)すみません、どうも和宏・渚ペアが書きやすいんです。
   週初めって、休みまで一番長いわけだからだるくて仕方ないけれど、好きな人に会えるなら
   待ち遠しくなるかななんて思ったり。
   そんな乙女気分、味わったことないですけどね!(笑)





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