28℃+熱





やけに暑いなと思ったら、気が付いたら梅雨明けまでしていたらしい。
期末試験もなんとか終えて、今はお待ちかねの夏休み。
・・・とはいえ、誰もが予定でいっぱいということは、ない。






「十夜ー、対戦ゲームやろうぜー」
声をかけると同時に部屋に入るが、誰もいない。
出かけたのかとも思うが、机の上には携帯が置かれているのをみると、家の中にはいるらしい。
それにしても・・・
「・・・寒い」
夏だと言うのに、この部屋での体感温度はかなり低い。
冷房の温度を見れば、20℃。
いつからつけてるのか分からないが、これじゃ寒いはずだとため息をつく。
「今は省エネの時代だぞー?」
言って、勝手に設定を28℃まであげる。
元々クーラーがあまり得意でない俺はこれで十分なのだが、十夜に見つかったらすぐに設定を変えられるだろう。
いつでも涼しい顔をしながら、実は暑がりらしい十夜の部屋はいつも寒い。



「あれ、晴日。いつ来たの?」
かけられた声に振り向けば、シャワーでも浴びてきたのか、タオルを片手に上半身裸の十夜がいた。
「ついさっき。暇だから、対戦でも付き合ってもらおうかと思って」
「ああ、いいよ。ちょっと待ってて」
「おう」
遊んでもらえる雰囲気に元気に返事して、そのままごろんとベッドに転がる。
こういう時、兄弟がいると良いよなと現金にも考える。
朝子も前はよく付き合ってくれたが、最近はあまり構ってくれない。
正直寂しいが、妹なんてこんなものなのかもしれない。
(それにしても・・・)
特にやることもないので、タオルで鬱陶しげに頭を拭く姿をぼんやりと眺める。
水も滴る・・・とはよく言うが、今の十夜はまさしくその例えが当てはまる。
血は繋がってないが、これで弟なんだから、兄としては複雑な心境だ。
顔も良いし、学校もそれなりのレベルのところ。
特に運動もしてないと思うのに、それなりに筋肉もついていて。
「・・・何?」
「んー、やっぱお前、かっこいいよなぁと思って」
視線に気が付いた十夜が訊いてくるのに、ぼんやりとしたまま素直に答えてしまう。
「・・・誘ってるの?」
しまったと失言に気が付いたのは、十夜がそう言って笑った時。
「なっ、違うよバカ!って来んな!近付くな!!」
慌てて否定するが、後の祭り。
さっとタオルを除けて、笑顔のまま近付いてくる。
ずりずりと後ろに逃げるが、扉とは反対にあるベッドの上から逃げられるわけもなく、すぐに壁にぶつかってしまう。
「恋人が自分のベッドにいて、さらに誘い文句までくれたのに、何もしない男がいると思う?」
「俺は恋人じゃなくて兄貴だ!大体、誰が誘っ・・・―――」
否定の言葉は、口付けとともに奪われる。

「恋人、でしょ?」

そう不敵な笑みを向けられて、もう一度今度はかなり深いキス。
この時点で否定も抵抗も・・・もはや不可能だった。




「ん・・・やぁっ・・・」
「嫌じゃないでしょ?」
耳元で囁けば、ふるふると首を振る。
だが、一度突き上げれば、大きく身体を反らす。
「あっ・・・もぅ・・・十夜・・・っ」
縋るように名前を呼んで、腕をきゅっと首に巻きつけてくる。
その様子に、晴日が完全に落ちたことを知り、一人笑みを浮かべる。
これだけ数え切れぬほど身体を繋げても、晴日は未だに十夜を恋人というより弟という目で見ているところがある。
元々鈍感なところもあって、それが可愛いところではあるのだけれど。
それでも、妙な意地を張られて、おあづけを食らったりするのも辛いわけで。
だからこそ、こうして落ちたときの晴日はたまらないのだ。
普段は素直に求めてくれない晴日が、自分を求めてくれる。
この瞬間が嬉しいと思う俺は、男として、また恋人として決して間違ってはいないはずだ。

「晴日・・・どうして、欲しい?」
「・・・・・・ぁ・・・っ」
「言わなきゃ、このままだよ?」
奥深くまで入れたまま、動かすことはせず耳元に囁きかける。
脇腹を軽く撫でただけで、晴日は身体をしならせる。
限界が近いらしい、身体を震わせて縋り付いてくる。
「晴日?」
「ぁ・・・も・・・意地悪っ・・・・・・しない、で・・・っ」
瞳を潤ませて、縋るように囁かれた声は酷く甘いもので。
ぞくぞくする。
熱が高まっていくのを感じる。

・・・その後は、ただもう貪欲なまでに晴日を感じるしかできなかった。






「あっちぃ〜・・・」
ベッドの上で裸のまま、晴日はだらしなく声を漏らす。
結局、流されるまま十夜として、終わった時には二人とも汗だくの状態。
「あー、もうベタベタする」
ぶつぶつ言いながら十夜のシーツで額の汗を拭く晴日に苦笑しながら、十夜も先ほど放ったタオルを拾って汗を拭う。
「まあ、ある意味運動したわけだし。それより晴日・・・」
「ん?」
「クーラーの温度、上げたでしょ?」
「あ・・・」
言われて思い出す。
そういえば、部屋に入った直後に設定を変えた。
「だって、20℃とか有り得ないから・・・」
「でも運動したら、最適な温度だったと思わない?」
「なっ・・・そんないつもするわけじゃないだろっ!」
「俺はいつでもしたいけど?」
さらっと言ってのける十夜に、絶句して。
「・・・もー、しばらくお前の部屋来ないからな!」
顔を真っ赤にして枕を投げつけられるのに、十夜は笑いながら軽々受け止める。
「じゃあ俺が晴日の部屋に行くからいいよ。汗かいても別に構わないし」
「・・・・・・絶対、入れてやらないっ!!」

夏休み。
特に予定もなく、だらだら過ごしそうな予感がする。
だけど今年の夏は・・・いつもより暑くなりそうな気がする。







05.08.12



  本当は、8月1日にアップ予定だったものが、パソ故障により今日に。
  時期が微妙にズレてますが、気にしないでいただければ幸い・・・<直そうよ。






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